SWATHの利用-日本でもこんなところに活用いただいています。

複雑なサンプル中のすべての検出可能なアナライトの定性/定量情報を同時に、また網羅的に取得可能なSWATH Acquisition。その利点を最大限に活用いただいている実例をご紹介します。SWATHで新しい道を見出しましょう。

標準物質不要の自動同定・定量システム(AIQS-LC) 公立大学法人 北九州市立大学 環境技術研究所 特命教授 門上希和夫先生

現在、多くの化学物質が生産され、様々な分野で使用されている。それに伴い、環境,食品、生活用品等で使用される化学物質によるヒトや生態系への影響が懸念されている。これら環境リスクを未然に防ぐ観点からも化学物質の残留状況のモニタリングを実施・継続していくことが必要と考えられる。加えて、標準品を必須とする従来の定量法では、事故や事件などでは対応の遅れを生むことは否めない。

こういった状況に対応するため門上先生は事故や事件などの不測の事態にも迅速に対応可能な標準品不要の自動同定・定量システムの構築を長年ご研究されている。本システムはその装置特性などの理由により当初GC-MSにより進められていたが、LC-MS/MS業界においてのテクノロジーの発展や、汎用に向く装置開発が行われたことにより、LC-MS/MSによるシステム構築に十分な土壌が出来てきていた。

システム構築のために最適な装置と判断され2016年にSCIEX X500Rシステムを導入、その後LC-MS/MSによるAIQS-LC開発のため活発なご研究を重ね、2019年5月には“Analytical chemistry”に論文が掲載された※1。論文中でも、SWATHテクノロジーは、低コスト・少ない手間で一斉分析が短時間で可能な点や信頼性の高い同定結果が得られる点、なおかつ新規化合物の定量をレトロスペクティブに可能な点を評価いただいている。

※1:Analytical Chemistry 2019, 91, 12, 7749-7755 (Article)Publication Date (Web):May 27, 2019 https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.analchem.9b01141


オンデマンドWebinar:標準物質不要の自動同定・定量システムの開発と環境試料への適用
本Webinarでは、データ取得方法の違いと特徴、なぜSWATHを選択したか?などの理由についても詳細にご説明いただいております。


テクニカルノート:QTOFシステムを用いた自動同定・定量データベース(AIQS-LC)及びターゲットスクリーニング法
本Webinarでは、データ取得方法の違いと特徴、なぜSWATHを選択したか?などの理由についても詳細にご説明いただいております。

日本中央競馬会(JRA)畜産振興事業「バイオマーカー解析技術を活用した肉用牛枝肉形質の生体評価手法の確立事業」 研究統括責任者 近畿大学生物理工学部・近畿大学先端技術総合研究所 松本和也先生

近畿大学生物理工学部・近畿大学先端技術総合研究所 松本和也先生統括のもと、平成28~30年度にJRA畜産振興事業「バイオマーカー解析技術を活用した肉用牛枝肉形質の生体評価手法の確立事業」が実施されました。本事業中の根幹をなすご研究「タンパク質の同時多項目定量解析方法(定量プロテオミクスSWATH法)の確立」においてSCIEX SWATHテクノロジーをご活用いただいております。ご研究では、“1回のアッセイ(約3時間)で1µlのウシ血清から多項目(135種類)のタンパク質を同時に定量解析する方法を確立”されており、SWATHによる網羅性なデータ取得といった特徴が存分に活かされています。※2

また、本事業は畜産業界におけるその新規性と重要性に着目され、平成31年度JRA畜産事業「肉用牛産肉形質のAI生体評価法の現場実装事業」に採択により、令和3年度まで実用化に向けた研究開発を継続することが決定されています。将来的には、本生体評価技術が全国に展開され、畜産業界への大きな貢献が期待されます。

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【キーワード】
和牛、肉質、生体評価、機器分析

※2:SWATH-MSとLasso回帰分析を用いた黒毛和種牛血清の経時的プロテオーム解析による枝肉形質バイオマーカー候補タンパク質の探索:第66回質量分析総合討論会/日本プロテオーム学会2018年大会 http://www.mssj.jp/conf/66/program/2P-05.html

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