ナノ材料の行く先およびヒトや環境への潜在的毒性を研究する環境科学者の間では、質量分析(MS)をベースとする分析の活用が急速に進んでいます。
ナノ材料は微小サイズの物質であり、少なくとも一次元が100ナノメートル未満の範囲にあります1。形状には球状、筒状、棒状および繊維状などがあります。ナノ材料は消費者製品に多く使用されるようになってきていますが、環境やヒトの健康に及ぼす潜在的影響に関する研究は引き続き行われています。
ナノ材料はナノテクノロジーの主要製品の一つであり、薬物送達システム、製剤、バイオセンサーに加えて日焼け止め、化粧品、食品などの消費者製品など多くの領域で使用が増大しています2-4。これらの微小粒子は吸入や皮膚からの吸収によりヒトの体内に取り込まれます5。ナノ材料およびナノ粒子の物理化学的特性をよりよく理解するためにはさらなる研究が必要です。また、空気、水および土壌沈殿物を含むさまざまな種類のサンプル中のナノ材料の特性解析と定量化を行うための、正確な技術に対する大きなニーズが存在します。
液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)の主要な特長の一つは、中程度の極性を有する化合物、極性化合物およびイオン性化合物に関して感度の高い微量定量が幅広い種類のマトリックス中で行えることです。
- 数千を超える化合物の同定および低ppt濃度での定量
- 誘導体化なしでの高感度解析による時間の短縮
- 精製されていない複雑なマトリックスの解析を可能にする質量分析の頑健性と選択性
- 包括的なスペクトルライブラリーを使用したサンプルのプロファイリングによる信頼性の高いデータの入手
- The Scientific Committee on Emerging and Newly Identified Health Risks (SCENIHR). Nanomaterials, 2009: https://ec.europa.eu/health/scientific_committees/opinions_layman/nanomaterials/en/index.htm
- Vance, M. E.; Kuiken, T.; Vejerano, E. P.; Mcginnis, S. P.; Hochella, M. F.; Rejeski, D.; Hull, M. S. Nanotechnology in the real world: Redeveloping the nanomaterial consumer products inventory. Beilstein Journal of Nanotechnology 2015, 6, 1769–1780. doi: 10.3762/bjnano.6.181
- Ray, P. C.; Yu, H.; Fu, P. P. Toxicity and environmental risks of nanomaterials: challenges and future needs. Journal of Environmental Science and Health, Part C 2009, 27(1), 1–35. doi: 10.1080/10590500802708267
- Nasrollahzadeh, M.; Sajjadi, M.; Iravani, S.; Varma, R. S. Green-synthesized nanocatalysts and nanomaterials for water treatment: Current challenges and future perspectives. Journal of Hazardous Materials 2021, 401, 123401. doi: 10.1016/j.jhazmat.2020.123401
- Sharifi, S.; Behzadi, S.; Laurent, S.; Forrest, M. L.; Stroeve, P.; Mahmoudi, M. Toxicity of nanomaterials. Chem. Soc. Rev. 2012, 41(6), 2323–2343. doi: 10.1039/c1cs15188f