MS3測定において、対象イオンに隣接する2つのピークも選択される理由


日付: 03/15/2018
カテゴリー:

0 投票
   印刷する    記事を評価する:

研究用にのみ使用できます。診断目的での使用はできません。


回答

QTRAP® LC/MS/MSシステムを使用する場合、リニアイオントラップのバックエンドにおけるフラグメントイオンの分離は、ロッド間のDC電圧オフセットによって制御され、非常にブロード(3-4 m/z) になります。MS3フラグメントを生成するために、イオンをまず分離し、次に高周波励起場(Radio Frequency Excitation Field)をトラップ内に残っているすべてのフラグメントに適用しますが、非常に狭いm/z範囲では励起場と共鳴します。共鳴しているイオンが振幅(運動エネルギー)を拾って気体分子と衝突し、フラグメンテーションを起こします。他のイオンは異なる共鳴周波数を持っているので、運動エネルギーをほとんど受け取らず、フラグメント化しません。
 
AF2(共鳴励起場の振幅を表すパラメータ)が非常に大きい場合には、非共鳴励起が隣接するm/zイオンの運動エネルギーを増加させ始めます。しかしほとんどの分子について、QTRAPシステム装置では、隣接するm/zを減衰させることなく、(一価の)同位体クラスターの一つのピークを完全に除去することができます。MS3測定におけるAF2の振幅の影響を確認することができます。例えば、質量1000.5 uのイオンの場合は、m/z 1001.5を選択し、AF2を増やしたときにどうなるかを確認します。最初は何も変化がないはずです(同位体クラスター全体を見ることができます)。しかし、AF2の振幅を大きくすると、m/z z1000.5と1002.5は変化しませんが、m/z 1001.5のピークは減衰します。