水や土壌など環境サンプル中のエタノールアミンを正確に測定するためには、感度の高い液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)システムをツールボックスに含めることが必要です。
エタノールアミンは、一級アミンと一級アルコールの両方を有する二官能性化合物です。エタノールアミン類は親水性であるため、腐食防止剤、化粧品やパーソナルケア製品の乳化剤、石鹸や洗剤用の界面活性剤として、また酸性ガス精製や農薬の製造など、化学産業において広く使用されています。一般的に使用されているエタノールアミン類には、モノエタノールアミン(MEA)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)およびN-ニトロソジエタノールアミン(NDEA)があります。
エタノールアミンの世界的な消費量は、成長が見込まれるアジア、特に中国の市場に牽引され、2019年から2024年にかけて年率2.5%で増加すると予測されています1。まだ限られた曝露試験しか行われていませんが、MEAやDEAが職業性ぜんそく(Occupational asthma)を引き起こす可能性を示す研究もあります2-4。さらに、化粧品などに含まれるDEAは、長期間保存すると製品中の他の成分と反応してNDEAを形成し、これが胃、食道、肝臓および膀胱の癌を引き起こす可能性があります5。このため、欧州委員会は化粧品へのDEAの使用を全面的に禁止しています5。
したがって、これらの化合物のモニタリング、定性および定量を行うための方法を見出すことは必要不可欠です。
LC-MS/MSによるエタノールアミンの同定
さまざまなマトリックス中のエタノールアミンの検出においては、それらが非常に低レベルでしか存在しないことが問題となります。このように低レベルでしか存在しない化合物を同定するために、環境科学者は感度の高い特異的な方法を必要としています。LC-MS/MSシステムを使用することで以下のことが可能となります。
- サンプル調製と分析時間の短縮
- データ品質の犠牲を伴わない、高スループットでの多数の夾雑物のスクリーニング
- ppmレベル~数ppbレベルまでの検出を達成可能
- 一貫性のある結果が毎日得られ、複雑な混合物からでも非常に高い繰り返し性および再現性を達成可能
- IHS Markit. (2020). Chemical Economics Handbook – Ethanolamines. IHS Markit, 2020. https://ihsmarkit.com/products/ethanolamines-chemical-economics-handbook.html
- Kamijo, Y.,; Hayashi, I.,; Ide, A.,; Yoshimura, K.,; Soma, K.,; & Majima, M. (2009). Effects of inhaled monoethanolamine on bronchoconstriction. Journal of Applied Toxicology 2009, 29(1), 15-–19. doi: 10.1002/jat.1373
- Savonius, B.;, Keskinen, H.,; Tuppurainen, M.,; & Kanerva, L. (1994). Occupational asthma caused by ethanolamines. Allergy 1994, 49(10), 877-–881. doi: 10.1111/j.1398-9995.1994.tb00791.x
- Dodson, R. E.,; Nishioka, M.,; Standley, L. J.,; Perovich, L. J.,; Brody, J. G., & Rudel, R. A. (2012). Endocrine Disruptors and Asthma-Associated Chemicals in Consumer Products. Environmental Health Perspectives 2012, 120(7), 935-–943. doi: 10.1289/ehp.1104052
- Shin, K., & Lee, Y. (2015). Simultaneous analysis of mono-, di-, and tri-ethanolamine in cosmetic products using liquid chromatography coupled tandem mass spectrometry. Archives of Pharmacal Research 2015, 39(1), 66-–72. doi: 10.1007/s12272-015-0677-5
- EU Official Document SPC/019/92 on Nnitrosamines in cosmetics https://ec.europa.eu/health/scientific_committees/consumer_safety/docs/sccs_o_090.pdf